菓子店にとって、夏は冬に比べて客足が落ち着きやすい時期です。暑さの影響で生菓子の需要が伸びにくかったり、外出を控える人が増えたりすることで、「夏はどうしても売上が落ちる」と感じる店も少なくありません。
しかし、この時期を単なる閑散期として過ごしてしまうのは、少しもったいないかもしれません。
冬にはクリスマス、年末年始、バレンタインなど、菓子店にとって大きな商機が続きます。ところが、繁忙期に入ってから新商品を考えたり、スタッフ教育をしたり、販促物を作ったりするのは簡単ではありません。
だからこそ、仕事に少し余裕のある夏こそ「冬の準備」を始める絶好のタイミングです。
まず取り組みたいのは「冬の商品づくり」
冬のイベント商品は、できるだけ早い段階から企画しておきたいものです。
例えばクリスマスなら、定番の生クリームケーキだけでなく、チョコレート系、焼き菓子のギフト、少人数向けの商品など、複数の選択肢を考えておくことで、お客様のさまざまな需要に対応できます。
ここで重要なのが、夏のうちに試作を重ねることです。
「もう少し甘さを抑えたほうがいい」「このサイズなら価格を抑えられる」「この包装ならギフトとして見栄えがする」など、実際に商品を作ってみることで見えてくる課題があります。
繁忙期になってから何度も試作を繰り返すのではなく、夏の段階で商品をある程度固めておけば、その後の原価計算や撮影、予約受付もスムーズになります。
商品が決まったら「売り方」まで考える
商品開発と同時に考えたいのが販売方法です。
特にイベント商品は、通常の商品以上に「予約」が重要になります。
何個売れるのか分からない状態で製造量を決めるより、事前予約を活用することで、材料の発注や製造計画を立てやすくなります。
そのためには、予約開始日、予約方法、締切日、受け渡し日時などをあらかじめ整理しておく必要があります。
店頭での予約だけでなく、電話、SNS、ウェブサイトなど、自店のお客様が利用しやすい方法を検討するのもよいでしょう。
また、昨年の販売データがあるなら、夏のうちに振り返っておきたいところです。
「一番売れた商品は何だったか」「どの価格帯が人気だったか」「予約が集中した日はいつだったか」「受け渡し時にどんな問題が起きたか」。
こうした情報は、次の冬の販売計画を立てるための貴重な材料になります。
写真やPOPも夏のうちに
冬の商品を販売するには、商品そのものだけでなく「見せ方」の準備も必要です。
商品の写真撮影、店頭POP、チラシ、予約案内、SNS用の画像など、イベント前には意外と多くの販促物が必要になります。
ところが、繁忙期になると製造と接客だけで手いっぱいになり、販促まで手が回らなくなることがあります。
そこで、商品が決まった段階で写真を撮影し、必要な販促物をまとめて作っておくのがおすすめです。
SNSについても、冬になってから毎回投稿内容を考えるのではなく、「商品紹介」「予約開始のお知らせ」「製造風景」「スタッフおすすめ」など、投稿のテーマをあらかじめ考えておくと運用しやすくなります。
スタッフ教育も「忙しくなる前」に
冬の繁忙期に起こりやすいのが、現場の混乱です。
注文が一気に増えると、製造だけでなく、包装、レジ、電話対応、予約商品の受け渡しなど、店舗全体の仕事量が増えます。
この状態で新人スタッフに一から仕事を教えるのは大変です。
だからこそ、夏の比較的余裕がある時期に、作業手順を整理しておきましょう。
例えば、
「予約商品の確認方法」
「商品の包装手順」
「電話注文を受ける際の確認事項」
「受け渡し時のチェック項目」
などを簡単なマニュアルにしておくだけでも、繁忙期の負担を減らせます。
スタッフ全員で実際の作業を確認し、「ここが分かりにくい」「ここでミスが起きやすい」という部分を見つけておくことも大切です。
厨房と設備の点検も忘れずに
冬のイベント前には、大量生産に備えて厨房設備もフル稼働します。
オーブン、冷蔵庫、冷凍庫、ミキサーなど、普段から使用している設備ほど、故障したときの影響は大きくなります。
繁忙期直前になって不具合が見つかると、修理や交換の手配が間に合わない可能性もあります。
夏のうちに設備を点検し、気になる部分があれば早めにメンテナンスしておきましょう。
あわせて、包材や材料の仕入れ先、発注数量、納期なども確認しておけば安心です。
「夏だからできる仕事」をリストアップする
冬の準備というと、クリスマス商品の開発ばかりに目が向きがちです。
しかし、本当に大切なのは、繁忙期に入る前に「忙しいとできない仕事」を終わらせておくことです。
例えば、
- 商品ごとの原価を見直す
- 利益率の低い商品を整理する
- 店内の陳列を見直す
- 厨房の動線を改善する
- 備品や包材を整理する
- 販売データを振り返る
- SNSやウェブサイトを整える
- スタッフの役割分担を決める
こうした仕事は、売上に直結しているようには見えません。
しかし、繁忙期の「時間」を生み出してくれる重要な仕事です。
夏の準備が、冬の余裕をつくる
菓子店にとって冬は、大きな売上を期待できる一方、製造・接客・予約管理などの負担も一気に増える時期です。
だからこそ、繁忙期に入ってから頑張るのではなく、時間に余裕のある夏から準備を始めることが重要になります。
商品を考える。試作する。写真を撮る。予約方法を決める。スタッフを育てる。設備を点検する。
一つひとつは小さな作業でも、積み重ねておけば冬の現場に大きな余裕が生まれます。
「夏は暇だから何をしよう」と考えるのではなく、「夏だからこそ何を終わらせておくか」。
この発想に切り替えることが、冬のイベント商戦を成功させる第一歩になるのかもしれません。
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